2018年はほとんど休眠していたが、2019年に再始動。3月はオーストラリアに遠征したものの天気に恵まれなかった。一方で、このとき導入したEOS6D改と夏に導入したStar71との組み合わせがとても運用しやすく、秋以降はこの軽量システムを活用した撮影が中心となる。
バラ星雲
これも有名な大型の散光星雲。ただし人間の目はこの赤(Hα光)に対して感度が低いので、ほぼ見えない。星雲の中でできた若い星団がその恒星風で周囲のガスを吹き飛ばしているため、中央の星雲が薄くなっておりバラのように見える。すなわち、バラ星雲中心部の星団の星々も、すばると同様に「反抗期」である。
2019/11/29撮影、SWAT350 + Star71II + EOS6Dmod、露出1min×70枚くらい。これが何度画像処理をやっても納得いかない。ファイル名で分かる通り5回ほど全部やり直して、ようやくまあまあな感じになった。最後のやり直しで、画像における星と星雲を分離するStarNetというソフトを使ってみたのだが、その効果はすごい。こういうものを趣味で開発して無料配布してくれる人たちがいるのが天文業界らしいなぁ。ありがたい事です。→2022/10/28再処理、だいぶ良くなった。
すばる M45
相当に知名度が高い散開星団で、これはアンドロメダ銀河とは違って「確実に」肉眼で見える。オリオン座が東の空に昇るころ、それよりもう少し高い位置を見ると小さな星の集団が容易に目に入る。双眼鏡なら星の配列までわかる。余談だが、しばらく前まではスバル車のエンブレムの星の配置はかなり忠実にこの配置だった。
星雲が星形成の母胎なら、この星団は反抗期の子供とでも言うべきか。星団の周囲に見える青いガスはかつて星団の星々を生み出した母なる星雲なのだが、今は自らが生み出した星々に照らされながらその恒星風により吹き飛ばされつつある。
2019/11/29撮影、SWAT350 + Star71II + EOS6Dmod、露出1min×70枚くらい。これほど有名な星団だが、個人的にはここ20年は撮ったことがない。なぜか?こういう大型の星団を撮るのに適当な機材を持っていなかったからである。普通はこういうところから入るはずなんだろうが、なんというか自分でも本当におかしなキャリア(?)だと思う。→2022/10/28再処理、だいぶまともになった。
アンドロメダ銀河 M13
かの有名な肉眼でも見える大星雲。という文句は真実ではあるが、一般の人からするとかなりミスリーディングだろう。「田舎なら、場所を知っていればなんとなく分かる」くらいがリアルなところなのだが、宣伝文句だけ聞けばこの写真みたいなものが肉眼で見えると誤解する。
2019/11/29撮影、SWAT350 + Star71II + EOS6Dmod、露出1min×50くらい。鏡筒は北アメリカ星雲の写真で書いてる通り調整不良があったため、代理店と相当やりあいして新品交換となったもの。さすがに新品交換されたものはまあまともと言える。この鏡筒、周辺光量が豊富でフラット補正がほとんど必要ないのが美点。1年前の写真と比べると焦点距離がf=180→350mmとほぼ倍で、これくらいになると大型の星雲星団は見栄えがする。しかもガイドに気を使わなくてよく、気軽に運べる有難いシステム。
当夜はまだギリギリ11月でしかも標高400mとそれほど高くなかったのでそこまで寒くないと思っていたが、甘かった。テントの中で3シーズンのシュラフで防寒着着て眠れるかどうかのギリギリ。バーナーはあるから、湯たんぽが欲しい所だ。いいのないかな。
満月
北天の天の川
はくちょう座からケフェウス座にかけての天の川。写真中央の輝星ははくちょう座のデネブ。天の川は我々の銀河系を内側から見た姿だが、銀河系内の星間ガスやダストは重力で銀河面に集まるため、天の川中央部には黒い帯ができる。幼少の頃は「暗黒星雲なんて気味悪いなぁ」と思っていたが、実はこの暗黒星雲は星を生み出す母なる領域である。大まかにいえば、この暗いガスが重力で集まって星を形成し、できた若い星によってガスが加熱されると赤い星雲(HII領域)になる。
2019/8撮影、露出時間1h30m、SWAT350 + Nikkor50mmF1.8(→F3.2) + EOS6Dmod。ソフトンA使用。縦に3パネルモザイク。PixInsightによるモザイク合成は初めてやったが、特に苦労もなく合成自体はできた。どうしてもレンズの収差によって周辺は合わないが、それ以外は適当にやった割にはつなぎ目が全然見えない。ソフトンAで輝星をぼかしているのは余計だった気もする。→2022/10/28再処理、地味にはなったが綺麗になった。
北アメリカ星雲
はくちょう座の1等星デネブのすぐ隣には、北天で最大級の赤い散光星雲(HII領域)が広がっている。肉眼で見るのは結構難しい説もあり、一方で簡単に見えるという人もおり。写真では簡単に写る。赤い輝線星雲の前に暗黒星雲がいるせいで北アメリカ大陸っぽい形に見える。ついでに暗黒星雲を隔てた右側の赤い星雲はペリカン星雲というが、どのへんがペリカンに似ているのか未だに分からない。
2019/8撮影、露出時間1h、SWAT350 + Star71II + EOS6Dmod。Star71IIによる1st shotだが、まぁ簡単に撮れること。気楽に撮ってそれなりに見られる絵になるあたりがありがたい。一方で隅の星像には比較的大きな非対称な崩れがあり、この写真はかなりトリミングしている。さてどうしたもんだか。(→最終的に新品交換となった。)
この写真も2020/8にStarNetをインストールした際に実験台として再処理。恐ろしく効く…。
アンタレス付近
夏の星座、さそり座の心臓。アンタレスの近傍には全天でも有数のカラフルな領域が広がっている。アンタレスを取り巻く黄色の反射星雲、その右上の青色の反射星雲、水素の輝線の赤い散光星雲。そして左上に向かって大きく広がる暗黒星雲に、アンタレスのすぐ右の球状星団M4。
2019/5撮影、露出時間1h20m、SIGMA180mmF2.8 + SWAT350 + EOS6Dmod。いままで長焦点でしか写真を撮っていなかったため、知ってはいたけど縁がなかった空域。よく写るね。確かに楽しい。
これくらいの焦点距離だとseeing(大気の揺らぎによる解像度の低下)を全く気にしなくていいので、とても気楽。この楽さを味わってしまうとC11に戻れなくなりそうで怖い…。
南天の天の川
日本では見えない南天の天の川の、最も派手なあたり。中央上寄りで横を向いているのが南十字座で、その左上に黒く抜けているのが石炭袋と呼ばれる暗黒星雲。(銀河鉄道の夜で著名らしいが読んだことはない…) 中央下寄りに見えるのがη Carinae星雲。
2019/3、オーストラリアにて撮影。Nikkor 50mmF1.8 + SWAT350 + EOS6Dmod。ソフトンA使用。大げさだが、それまでカメラレンズによる天体写真というものを完全に舐めていた私の認識を変えた写真。単純に綺麗だと思う。
一方で、この撮影旅行は天気にあまり恵まれなかった。3夜のうち2夜が雨。残る一夜は晴れ間を求めて150km移動するという強行軍。最低限の成果は得られたものの、不完全燃焼ではある。これは再戦するしかないな。