故障していたATLUXが約1年を経て戦列に復帰し、C11とともに主力として活躍。他には、新規加入したカメラレンズ群がサブ機として良い仕事をしてくれた。
C/2021 A1 Leonard彗星
今が旬の明るい彗星で、明け方の東天うしかい座あたりに5等級ほどで見えている。この彗星は1月に発見された当時は木星軌道くらいの距離にいたが、1年ほどかけて地球の近くまでやって来た。この後は高度を下げていって北半球からは見えにくくなり、年明け2022/1/3に近日点を通過してから太陽系外に飛び去って行く予定。
彗星で5等級というと数年に1個くらいなので相場からしたら「結構明るい」のだが、個人的には物足りないと感じてしまう。というのも初めて見た彗星が歴史に名を遺す大彗星だったからだ。百武彗星は90°にも達する尾を伴いながら北天を駆け抜け、ヘールボップ彗星は夕方の景色の中に浮かんでいた。1996年と1997年の春に相次いで現れた大彗星の印象のせいで、今でもなんとなく「彗星は春に来るもの」と思っているし、今回くらいの彗星を見ても「ああ、これくらいか」なんて思ってしまう。大彗星を見られたこと自体は幸せなことだが。
彗星の頭(コマ)はこの写真のように緑色をしていることが多いが、これは二原子炭素(C2)やシアンラジカル(CN)の輝線によるものだそうだ。彗星の核は主成分の水の他にも炭素や窒素を含む化合物が含まれており、これらが太陽光で電離して発光している。同じような緑色の天体としては惑星状星雲があるが、あちらは酸素の輝線501nmなのに対して彗星のC2の輝線は510nmで少し波長が違う。従ってOIIIフィルタだと彗星は写らなくなるはずなので、念のためご注意を。
2021/12/7 5:00~5:30、岡山県東部。SWAT350 + Star71II + EOS6D改(SEO-SP4)。現地に着くなり双眼鏡で眺めてみると「あ、いるわ」くらいに見えていた。
エンゼルフィッシュ星雲
見てのとおりエンゼルフィッシュに似た形のHII領域で、オリオン座の北部に位置する。写野左寄りのオレンジ色の輝星はベテルギウスで、星雲中央の青白い星がオリオンの頭にあたる青色巨星のオリオン座λ。この星がオリオン座分子雲のガスを電離することで水素ガスが赤く光っている。この星雲は見かけの大きさが6°とかなり大きく写真だと比較的簡単に写るが、眼視では双眼鏡や望遠鏡を使っても見えない。距離約1100光年。
2021/12/3撮影、兵庫県中部。SWAT350 + Tamron SP 85mm F1.8 Di VC USD/Model F016E @F1.8 + EOS6D改(HKIR)、30s × 44subs = 22min。また夜半過ぎにオリオンが南中する季節が来たか。山は気温1℃で、路肩にはところどころ雪が積もっていた。季節は巡る。
この写真、もともとは縦に3枚モザイク合成してオリオン座全景を撮るつもりだったのだが、このフレーム以外は雲が通って全然使い物にならなかったので単体でお目見えになった。そもそも天気予報もあまり良くなかったのだが、ひと月に一度は山に上がって星を撮らないといけない体なので。なんというか山の空気を吸いに行っている感がある。
タムロン85mmは初陣で、F1.8開放で使ってみた。テストもしてみたが、中央はF2.0でだいぶ良くなる。周辺はF2.5まではあまり変わらずF2.8で急に改善する感じ。なので実用F2.0かな。画像処理メモ:絵はStarnet画像でだいたい作る、乗せる星の輝度下げは定数をかけるよりはErosionの方がいい。バックグラウンドのレベルは下げ気味にする。
ほぼ皆既月食
食分98%という深い月食で、ほとんど皆既月食と言ってよい。前に皆既月食を撮ったのは2015年だっただろうか。
たまたま同じような欠け具合の地球照と月食の写真が並んだのだが、これを見比べてみると面白い。まず欠け際の線の形をみると、三日月が欠けているのは球体に横から光が当たっているから極を長径とする楕円なのに対して、月食による欠けは地球の影によるものなので円。また、影の部分の色についてみると、地球照は地球からの反射光なので白色寄り、月食だと地球大気を通った光なので赤銅色となる。
2021/11/19撮影。兵庫県西部、SWAT350 + Star71II + EOS6D改(RGB) / ASI1600MM-cool(L)。半月前も書いていた「月を撮るのにいい得物がない」は特に解決する気もなく、結局は同じ機材でのLRGB法での撮影となった。時間が勝負の撮影だとカメラの取り換えなんて本当はやりたくないのだが。f=1000mmくらいの筒を買うかなぁ…
地球照
夕焼け空に浮かぶ三日月が綺麗だったので。
2021/11/7撮影。兵庫県西部、SWAT350 + Star71II + EOS6D改(RGB, 5 x 1/10s) / ASI1600MM-cool(L, 10 x 1s)。月の全景を撮るのにいい得物がなくてえらく苦労した。Star71は焦点距離350mmと長くはないので、35mm判のEOS6Dとの組み合わせでは「写野中心にちょこっと月」くらいになる。センサの小さいASI1600と組めばまだ見られるサイズになるが、これはモノクロカメラだ。さりとてC11+6Dだと幾分はみ出るし。焦点距離500~1000mmというメジャーな機材を持ってないのでこうなるのだが、結局は仕方なく2つのカメラによるLRGB合成という方法をとった。
画像処理中に思ったことだが、月の移動というのは結構速い。月の運動は大まかにはひと月で一周だから、1時間で月ひとつ分。と言われてもいまいちピンとこないが、露出時刻が10秒違うコマを見比べると背景の星が随分と動いており、とてもコンポジットなどできない移動量になる。月を撮るときは、ちゃんと赤道儀の駆動速度切り替えを「月」にするようにしましょう。
アイリス星雲
ケフェウス座の反射星雲。距離1300光年、大きさ6光年。見てのとおり光源は中心にある恒星(SAO19158)で、これは青白い色から推察される通り10太陽質量の重い星である。
2021/10/2撮影、兵庫県中部。C11@F6.3(Starozona Reducer/corrector II) + ASI1600MM-cool / 6D改(HKIR) + ATLUX、LPS-D1、M-GENによるオフアキシスガイド。L-RGB合成、LはASI1600で1min × 173subs、RGBは6D改で2min × 20sub、合計3.5h強。結構気合を入れて撮影した割に絵が悪く、真面目に解説を書く気にもなれない。まずASI1600の縞ノイズが盛大に出ており、次にFWHM=3.3"と解像度が全然出ていない。どちらも少し真面目に詰める必要があるのだが、正直面倒だ…。あまりギチギチやると面白くなくなるので、スルーしよう。
(2022/7/27追記) ASI1600をきちんと使うために真面目に見直してみた。縞ノイズの根本原因はつかみ切れていないが、どうもバイアス画像とダーク画像でペデスタルがずれているためのように見える。その結果ダーク減算が過剰補正になっていたため、目視でダーク補正量を合わせ込んだところ縞ノイズはかなり消せた。検証の過程で「RegisterせずにスタックしたL画像を使ってマスターのバイアス画像・ダーク画像が適切かどうか評価する」ということをしていたのだが、この方法はトラブルシューティングに役立ちそうだ。解像度が低く露出不足なのはどうしようもないが、縞ノイズは消えたのでかなりマシにはなったかと思う。
二重星団 h-χ
夏から冬に至る天の川の流れの中ほど、カシオペア座とペルセウス座の間に肉眼でもボンヤリ明るく見える領域がある。それがこの二重星団で、双眼鏡だと二つの散開星団が寄り添う様子が見える。肉眼でも見える星団なのでhとχというバイエル符号が与えられている。
h-χは知られている散開星団の中ではかなり若い部類だが、誕生からの時間は左側(NGC884)は1150万年、右側(NGC869)は640万年と推定されている。これらを構成する星々は青色巨星だが、そのうちいくつかは既に赤色巨星へと進んでおり、写真でもそれらの星が見て取れる。
この星団といえば中学3年の頃に初めて天体を撮った頃に撮った対象。当時はもちろんフィルム時代で、レンズは父親が死蔵していたPentax 200mmF4だった。光害で緑色にかぶったバックグラウンドに小さく二重星団が写った写真だったが、2L判に引き伸ばして長らく実家の部屋の壁に飾っていたものだ。(もしかしたら今もあるかもしれない。)
2021/10/2撮影、兵庫県中部。Star71II + 6D(SEO改) + SWAT350。1min × 18subs + 3min × 17subs ≒ 1h強。サブ機によるお気楽撮影だが、メイン機との2台体制だと忙しい。Star71は輝星がボテッと写る傾向があって、これはあまり好きではないのだが、散開星団を撮るのに限れば賑やかでいいかもしれない。対象が赤緯57°とかなり極に近くて日周運動が小さいので、ガイドなし3分露出でも全く問題ない星像だった。
さんかく座銀河 M33
さんかく座にある大型の銀河。三日月星雲が西の林にかかる位置まで沈んでしまった後、夜明けまでちょっと時間があったのでちょうどいい位置にいたこの銀河を撮ってみた。
まずはさんかく座について。アンドロメダ座の近傍にあって明るい星の少ない秋の夜空では何故か目立つ星座ではあるが、昔からずっと「星を三つ選んだらほとんど三角形になるやんか」と思っている。なんなら「さんかく座」で天球面を充填することさえできるはずだが、そのくせ「特徴的な神話は伝わっていない(Wikipedia)」らしく、この星座を見るたびに「なにがさんかく座やねん」と突っ込んでいる。
そのさんかく座の主要な見どころがこの銀河(M33)である。この銀河は300万光年の彼方にあり、我々の銀河系(天の川銀河)やアンドロメダ銀河とともに局部銀河群を構成している。これらの銀河は互いに重力で引き合っているため天の川銀河とアンドロメダ銀河は約40億年後に衝突すると予想されているが、さんかく座銀河も同時期に衝突する可能性があるらしい。300万光年を40億年、速いんだか遅いんだか最早よく分からない。
2021/8/11撮影、兵庫県中部。C11@F7.5 + 6D改(HKIR) + ATLUX、フィルタなし、ガイド鏡+M-GENガイド、1min × 60subs = 1h。この銀河は昨年にStar71(f=350mm)で撮っているが、やはりC11(f=2100mm)だと絵の力が違う。解像度はFWHM=2.3"で比較的良い。バックフォーカス調整が不十分なので写野周辺でコマあり。ガイド鏡方式でのガイドだが、三日月星雲とは打って変わって流れが少なく、やはりガイド鏡との視線方向の相対変化量は姿勢にかなり依存するように思える。どちらも赤緯+30°あたりの天体だが、三日月星雲はtelescope eastで撮ったのに対してM33はtelescope westだったのが効いているのだろうか。
三日月星雲 NGC6888
はくちょう座の中心 γCyg(サドル)の近傍にある星雲で、5000光年彼方の大きさ25光年のガス塊である。三日月星雲と呼ばれてはいるが、他にもクラゲか、エイか、脳味噌か、肋骨か、これほどイメージを掻き立てる星雲も珍しいだろう。
この星雲を形作るガスは、中心部に見えている明るい恒星が放出したものである。この星はウォルフ・ライエ星(WR星)と呼ばれるタイプで、太陽質量の25倍を超える重量級の星が寿命の末期に外層のガスを吹き飛ばして高温の内部が露出した状態である。三日月星雲ではこの恒星風が周囲のガスに衝突することで複雑な形を生み出していると考えられている。重量級の星の宿命として、この星もいずれは超新星爆発を起こす運命にある。
2021/8/10-11撮影、兵庫県中部。C11@F7.5 + 6D改(HKIR) + ATLUX、IDAS NBZフィルタ、ガイド鏡+M-GENガイド、2min × 27subs + 1min × 41subs ≒ 1.5h。FWHM=2.8"で悪くはない。ガイド鏡方式でのガイドは運用が楽でいいが、ガイドエラーが大きくて1枚あたり露出時間を伸ばせずノイズの多い画像となった。
北アメリカ星雲とペリカン星雲
はくちょう座デネブのすぐ東隣りの北アメリカ星雲と、そこから暗黒帯を挟んで右側のペリカン星雲。これ昔からずっと「どこがペリカンか分からん」と思っていたが、今ようやくわかりました。この写真だと左向きですね。
写真から見て取れるとおり実際はこれらの星雲は単一のHII領域(Sh2-117、距離2500光年)で、手前にある暗黒星雲のため二つに分かれて見えている。近年の研究によればこの大きなHII領域を電離して輝かせているのは暗黒星雲の裏側に位置する恒星(J205551.3+435225、下段写真)だそうで、北アメリカ星雲に対してフロリダ東岸に相当する位置にあるため通称バハマ星と呼ばれる。一般にHII領域を形成するような星は重量級で表面温度が高いため青く見えるが(例:カリフォルニア星雲の ξ Per、2020/9-10撮影)、このバハマ星は暗黒星雲による減光のため赤く見える。このメカニズムは夕焼けと同じだが、本来は青い星が赤く見え光量は1/10000倍に減衰するほどの「夕焼け」であり、もし減光がなければバハマ星は普通に肉眼で見える明るさ(3.6等)だそうである。
兵庫県西部、Star71II + 6D(HKIR改) + SWAT350、NBZフィルタ。Sub露出時間1min、2021/7/19~8/5の合計590枚、10時間弱。ようやくの梅雨明けで写真の更新はひと月ぶりとなる。この写真は梅雨明け記念 兼 機材テストくらいの位置づけで、テスト対象はIDAS社製NBZフィルタ。このフィルタは最近流行りのデュオナローバンドフィルタで、Hαの赤とOIIIの青緑の近傍各々12nmずつを透過するため単板カラーカメラでもAOO合成的なカラー画像が一発で得られる。光害地かつ月も大きい悪条件にもかかわらずよく写るものだと最初は思ったが、露出時間を増やしていってみるとその割にはSN比がなかなか上がらない印象。色合いについては普通に撮った写真(2019年撮影の北アメリカ星雲)とはかなり違うが、ナローバンド故に「正しい色とは何か」がもはや分からないので、これで良しとする。
いて座~たて座付近
多数の星雲・星団がひしめくこの領域は、双眼鏡でボーッと眺めるのによい。
2021/5/23 @岡山県東部。Sigma180mmF2.8 + 6D改 + SWAT350、上下2パネルモザイク合成、合計露出時間約2h。 さすがにモザイク合成すると情報量が多い。最近の写真では星雲の強調のためにStarnetを使って星の輝度を下げる処理をすることが多いが、この写真ではそれなしでも暗黒帯の分布がよく分かる。
銀河系中心付近
春から夏にかけての南の空、さそり座からいて座にかけての領域。ここが我らが銀河系の中心部の方向で、天の川が最も太く明るくなるあたりである。写野右寄りに見える黄色っぽい恒星はさそり座のアンタレス。
真の銀河系中心は2番目の写真で示した位置にある。さそり座といて座の境界の、ギリギリいて座あたり。例によって銀河面に集まる宇宙塵のため可視光では暗黒星雲しか見えないが、電波で見ればここが明るく見える。というか、この強力な電波源(いて座A*)が銀河中心であることが後から分かった。この電波は太陽質量の百万倍を超える大質量ブラックホールに起因するものであることが確実視されており、その周囲を数十年という非常に短い周期で公転する恒星の運動も観測されている。
2021/5/10 @岡山県北東部。Tamron 15-30mm F/2.8 (@30mm F3.5) + 6D改。SWAT350、露出2min × 27枚スタック。
夏の大三角
「夏の大三角」とは名付けたが、この写真だと案外見にくい。まず中央上寄りの輝星がこと座のベガ(織姫星)。次に、天の川の対岸で写野の右下寄りにわし座のアルタイル(牽牛星)、そして天の川の左上あたりにある赤い散光星雲群の中に埋もれている輝星がはくちょう座のデネブ。
2021/5/10 @岡山県北東部。Tamron 15-30mm F/2.8 (@23mm F3.5) + 6D改。SWAT350、露出2min × 5枚スタック。僅か10分露出でこれだけ写る。次の「銀河系中心付近」では1hほど露出しているのだが、夏の大三角の方が高度が高いだけあって光害の影響が明らかに少ない。かなり暗くて条件のいい場所で撮っているので、夏の大三角を撮り始めてすぐに「ああ、こんな良い場所で撮るのに銀河中心を撮らない手はない」と思い立って対象変更した、のでこの写真は露出10分になった。
球状星団M13
ヘラクレス座に位置する北天最大の球状星団。なぜか球状星団が結構好きなので、ちょいちょい撮ってしまう。この写真には青色はぐれ星が沢山写っているが、説明する元気がないので興味ある方はこちらへ。
2021/5/6 @岡山県北東部、C11@F7.2 + ASI1600MM-cool + ALTUX, Baader Clear/RGB filters, LRGB image. L: 1min × 24subs、RGB:1min × 4subs each, Total 30min+. 予報ではきれいに晴れるはずが、望遠鏡のセットアップが完了した頃から曇った。明け方に少し晴れた時間で撮った「星撮りに行きました」の証拠写真レベルではあるが、FWHM = 7px = 2.8" で幾分甘いものの悪くはない。画像処理は相変わらず下手ですが。
昇る天の川
天の川
広角レンズによる天の川。写野の右端にさそり座、左上にはくちょう座。
写野右下で天の川の幅が広いあたりが銀河系の中心。幅が広いのは銀河中心の膨らみ(バルジ)で、このあたりは古くて赤い恒星が多いため茶色っぽく写る。また、渦巻き銀河は水平面に暗黒帯を持つものが多いが、我が銀河系の暗黒帯も立派なもので、写野中央に写る暗黒帯は肉眼でも黒っぽく見える。
大雑把に言えば銀河とは1000億個の恒星が形作る直径10万光年の円盤だが、我が銀河系も数多ある銀河のひとつだから、天の川をカメラレンズで撮ればバルジや暗黒帯などの銀河らしい構造が写る。これはまあ当然として、面白いのは他所の銀河との対比だ。例えば直近のひまわり銀河、これもわが銀河系と同規模の構造物だが撮影機材は焦点距離2000mmの望遠鏡となる。広角レンズでも収まらないような巨大な構造物が望遠鏡でないと捉えられないほど遥か遠くにあるわけで、このあたりに宇宙の奥深さを感じる。
2021/4/10 @岡山県北西部。Tamron 15-30mm F/2.8 (@15mm F2.8) + 6D改。SWAT350、露出1min × 10枚スタック。左下に雲があるのが玉に瑕、また撮り直そう。
ひまわり銀河
りょうけん座の銀河、味気ない名前ではM63とかNGC5055とか。距離2500万光年。比較的大型の銀河だが、それでも長辺0.2°ほどに過ぎない。この銀河は以前にも撮ったことがあるが、渦巻きの構造がよく見えるのでお気に入りである。
撮影したシステム(C11+ATLUX)は、およそ1年の休止期間を経てこれが復帰初戦となる。昨年に赤道儀が壊れたのだが、この度ようやく修理から帰ってきたのだ。銀河団を撮るなら小さいシステムでよいが、銀河単体みたいな小さいものを相手にするとなるとC11に限る。銀河だらけの春の夜空はC11にとって絶好の漁場だ。
2021/4/9-10 @岡山県北西部。C11 with SCT Corrector LF + ASI1600MM-cool, ATLUX, OAG with LodestarX2. Baader Clear, RGB filters.
L:10s @Gain300 × 1500枚 →4h強
低輝度部:FWHM<8pxの1200枚
中輝度部:FWHM<6pxの230枚
高輝度部:FWHM<5pxの30枚。
RGB:3min @Gain100 × 18枚 →54分
ラッキーイメージングを真面目にやってみたのだが、結果として低輝度部のFWHM=3.0"に対して高輝度部では2.1"で、意図通り解像度はかなり上げられた。40GBのデータと格闘した甲斐はある。一方で、この写真は低輝度部の横縞が目立つ。これはバイアス画像やフラット画像には見られないのでちょっと真面目に調べないといけないのだが、とりあえず対症療法としては2つ考えられるところ。①低輝度部については数分間の露出の画像を使う。②横縞の間隔(16px)よりも大きくディザリングする。次回の撮影で時間があれば、M63について①をやって横縞を消した写真に差し替えるかもしれない。
M81、M82
おおぐま座の銀河。右がM81、左がM82。距離1200万光年。M81は昨年C11で撮っているが、今回はM82と一緒に遠景で。このペアで撮るのは十年ぶりとかの気がする。先日のしし座の銀河団の成果に気を良くしてLRGB合成で撮ってみたのだが、口径7cmにしてはよく写るものだ。
M82は変な銀河で、極あたりからガスを噴き出したり爆発的星形成(スターバースト)を起こしたりしている。「これは数千万年前にM81と接近したことの影響である」というのがよく見る説明だが、その割には相方のM81は均整の取れた綺麗な楕円銀河だなぁ。重力による相互作用なんだからM81の方も型崩れしてていいのに。M81はHII領域の多い銀河ではありますが。
共通:SWAT350 + Star71II、2021/3/17-18@岡山県東部。
輝度:ASI1600MM-cool、1min × 205 = 3h25m
色:EOS6Dmod、2min × 29枚 = 0h58m
もう3月も下旬なのに気温0℃程度と寒く、テント泊がなかなかきつかった。こうなると例によって変なミスが起きるもので、今回はケーブル引っ掛かりによるガイドミスで1時間以上を失っている。なんというか、天体写真撮影というのは「失策の続くゲーム」だなぁと思う。実感として全てが完璧に行くことはない。天文台でも建てて望遠鏡を組みっぱなしにすれば、ミスはだいぶ減るだろうにな。
Leo Triplet
しし座の中央部南寄りにある銀河団で、M65、M66、NGC 3628という3つの銀河からなる。距離3500万光年。
この銀河団といえば、高校生の頃に天文雑誌のフォトコンテストに掲載されたことを思い出す。当時は月刊天文誌のフォトコンに「18歳以下の部」があって、そこで1席を頂いたのである。同時に応募した子持ち銀河M51の写真も「甲乙つけがたい」として掲載され、選者からは「手持ちの機材を丁寧に使いこなしている印象を受けます」とのコメントを頂いた。当時の機材はVixen ED102Sで、フィルムはFuji G400。今では電子化されたガイドも当時は人力で、寒空の下で数十分間ガイド鏡を覗き続けながらコントローラのボタンを押していた。この苦行はめでたくフォトコン1席の賞品に結実したわけだが、これはあまり使い込まずに友人に贈呈してしまった。
共通:SWAT350 + Star71II
輝度:ASI1600MM-cool、1min × 192 = 3h12m、2021/2/21@兵庫県北中部。
色:EOS6Dmod、1min × 80枚 = 1h20m、2021/3/14@岡山県東部。
ASI1600で撮った高解像度の輝度画像に6D改で撮った低解像度の色を合わせたLRGB合成。机上検討では6D単体の画像と比べて解像度が2倍強になる計算だったが、結果としては意図通り、そして意外なほどに銀河の細部の構造が写った。この組み合わせは結構面白いな。解像度的にはまだシーイング限界よりは低いのだが、良く言えばシーイングに左右されず常にそこそこの解像度の写真が撮れるシステムと言える。常々「春は小口径だと撮るものがない」と言っていたが、案外遊べそうだ。
くらげ星雲とM35
ふたご座の兄カストルの足元の星野。くらげ星雲は超新星残骸、距離約5000光年。M35は写野上辺の明るい散開星団で、距離約4000光年。
ふたご座は仲良く足を天の川に浸しているので、このあたりは見てのとおり星数が多い。これでも全周の天の川で最も薄いあたりのはずだが。銀河座標という言葉がありまして、これは別にSF的なものではなくれっきとした天文用語。天の川を基準とした座標系なのだが、これについては下手な解説をするよりWikipediaの図を見て頂いた方が早い。ふたご座の足元あたりは銀系180°、銀緯0°あたりで、要するに天の川でも銀河中心の反対方向となる。なので大まかにいえば天の川が最も薄いあたりなのだが、それでもこれだけの数の星が写るんだなぁ、という感想。
2021/1/9-10 @岡山県東部、SWAT350 + Star71II + EOS6Dmod with LPS-D1。3min × 59枚 ≒ 3h. 気温-4℃でとにかく寒かった。外に出るのが億劫なほど寒くなると、変なミスが起きやすくなるというか、その被害が大きくなる。定期的なピントの確認をサボってピンボケのコマを量産するとか、ピント確認の為にマスクつけたり設定変えたりしたのを戻し忘れたりとか。もう少しマメにやればいいんだが、そのための10分間の作業が苦痛な季節だ。