まだ引っ越しの途中。
The Milky Way Arch
春の明け方、東の空にはアーチがかかる。遡ること約3時間前のおとめ座やかみのけ座が南中する頃には天の川が全周の地平線に張り付いた形になっているが、そこから再び天の川が立ち上がってくるのだ。まあ天の川がこの位置を通るのは毎日のことなのだが、梅雨の時期はあまり晴れないし、梅雨明け後だと薄明終了時点で高度が上がり過ぎているので、こういう絵が撮れるのはもっぱら梅雨入り前の春ごろとなる。
2022/4/9、岡山県北部。 Tamron 15-30mm F/2.8 (@15mm F2.8) + 6D改(SEO-SP4)、20s × 横5枚パノラマ合成 by Image Composite Editor (ICE)。Y先生にICEを教えてもらい初めて使ってみたが、一部につなぎ目が残るもののほぼ文句ないつながり方だ。ダーク補正をサボったのでホットピクセルが目に付く。
星景写真の画像処理のメモ書き。暗い前景と光害で明るい低空の輝度差をどう圧縮するかが課題。Pixinsightのみで画像処理しているが、現状では輝度マスクをかけてDBEで光害を落としつつ前景との輝度差を圧縮し、その後はMLTなりHTで「なんとかする」としか言えない程度。
アンタレス付近
さそり座の輝星アンタレスの周辺の星野は派手なところで、星撮り屋には良く知られた領域だ。へびつかい座ρ分子雲のガスと塵が織りなす輝線星雲・反射星雲・暗黒星雲が入り混じり、その中に球状星団がいたりする。
2022/4/9、岡山県北部。SWAT350 + Sigma 180mmF2.8 + 6D改(HKIR)、30s × 365 ≒ 3h。同じ対象を同じ機材で3年前に撮っているが、今回は当時より画像処理で苦労していない。ことさら構造強調などせず自然に仕上げた。
金曜の会社帰りに山に上がったのは久しぶりだ。前夜まで「C11を持っていくかどうか」で悩んでいたのだが、金曜のだるさに負けて軽装備(主力180mmレンズ、サブ固定撮影)で臨んだのが大当たり。心理的・体力的にだいぶ楽だっただけでなく、そこそこ風があったのでC11だと逆に厳しかったかもしれない。山に足繁く通うには、気軽に持ち出せて、パッと撮影開始できて、確実に成果が出せる、そういうサブ機があるといい。
初夏
南東の空に昇る天の川を見ると毎度のことながら初夏の気分になる。とはいえ気温は5℃だが、これでも先週の-1℃よりはだいぶ過ごしやすい。
立ち上る天の川の姿は堂々たるものだ。数千億の恒星が形作る光の帯。太陽もその一塵に過ぎず、我々はその第三惑星の上を這いまわっているに過ぎない。天の川をかき消す人々の営みも10万光年の彼方から見れば無に等しい。世界は漠として広い。
2022/4/9、岡山県北部。 Tamron 15-30mm F/2.8 (@15mm F2.8) + 6D改(SEO-SP4)、20s × 15 = 5min。赤道儀なしの固定撮影。そのままスタックした地上の画像と、星の位置を合わせてスタックした空の画像とを合成しているが、技量不足により地上と空の輝度差の圧縮が不十分。まあとにかく「固定撮影でも夜空は撮れる」というのが発見だ。色調は個人的にはこれくらいの青寄りが綺麗でいい。
M94
りょうけん座の銀河。位置的にはりょうけん座のα(コルカロリ)とβの間くらいで分かりやすく、5cmファインダーでもなんとなく見える。中心核はかなり明るく、その周囲のディスクは渦巻き構造に散らばる赤いHII領域が美しい。さらにその外側には淡いリングが見えるが、これは近年の研究によれば中央のディスクと連続した渦巻きの腕であるらしい。(wikipedia)
2022/4/2、岡山県北部。ATLUX + C11(Starizona SCT corrector LF, F7.5) + 6D改(HKIR)、IDAS LPS-D1、ガイド鏡 + M-GENによるオートガイド。2min × 140 = 4h40min。一晩中粘って撮っただけあって、ある程度満足できる写真だ。珍しい。 風が強い時間帯に赤緯のエラーが大きかったのだが、対策としてはまず防風ネット、次にオートガイドのPゲインを落とせば改善するだろうか。生データの解像度はFWHM=3.5px=2.3"程度でまあまあ。前回M106と同様、銀河の高輝度部は全数スタックのDeconvolution、恒星はFWHM上位25%で解像度を上げているが、このやり方は星の周囲にartifactが出にくくて良い。外側のリングを表現するため中心部の輝度をいくらか落としている。
月刊天文ガイド2022/8入選作。雑誌のフォトコンに応募したのは四半世紀ぶりとなる。おそろしや。大昔も思ったことだが、掲載写真と応募写真を比べると当然ながら応募したものの方が明らかに良い。本作の売りは外側リングや内側ディスク暗黒帯の構造だったのだが、掲載写真では淡い部分や細部構造がかなり失われ、彩度もだいぶ下がっている。そのため掲載写真は同ページの他の銀河の写真と比較しても明らかに地味だ。フォトコンに応募するなら、見どころがはっきり分かる程度に構造・色彩を強調してプリントした方が良さそうだ。
M106
りょうけん座の銀河。りょうけん座と言うと一般にはなじみの薄い星座だが、大まかには北斗七星のひしゃくの柄で囲まれたあたりの領域になる。このあたりは春の空で銀河や球状星団が多いが、このM106もその中にあって比較的大型の銀河だ。Wikipediaによれば8.4等、長辺11分角で、距離2500万光年らしい。
この銀河は立派な一対の腕を持っているが、実はそれだけではない。ハッブル宇宙望遠鏡による可視・赤外の合成画像では、さらにもう一対の赤色の腕が見えている。(実は本HPの写真でも彩度を上げて強調すれば見えるし、なんなら強調しなくても心の目でギリギリ見える。)この赤い腕は、銀河の中心にある超大質量ブラックホールによって周囲の物質がかき回されていることによるものらしい。
2022/2/28撮影、岡山県東部。ATLUX + C11(F7.5) + 6D改(HKIR)、IDAS LPS-D1、1min × 202 = 3h22min、ガイド鏡+M-GENによるオートガイド。画像処理前でFWHM=2.4"とまあまあ。恒星のみFWHM上位25%の画像を使用、銀河中心の高輝度部は逆畳込み。ラッキーイメージングと逆畳込みは「光量を分解能に変える」と言う点では共通だが、Sub露出時間1minの選別画像と全数スタックの逆畳込みを比較すると逆畳込みの方がかなり良かった。まあ1minだから、Shift & add は効かなくはないが効果がかなり薄いのは仕方ない。
以前に「寒いとミスが増える」と書いたが、今回もバーティノフマスクの外し忘れで50分を失った。真面目に撮ってたところでこれは結構痛い。後悔するくらいなら現場で丁寧にやればいいのだが、それができないのは寒さゆえ。
かに星雲
西暦1054年に起こった我が銀河系内の超新星爆発の残骸。その当時、超新星が当時おうし座で明るく輝いた様子は世界中でいくつかの文献に記録されている。爆発した星のガスは約1000年かけて今の形となり、現在も約1000km/sの速さで広がり続けているらしい。この星雲は全体に広がる白っぽい部分(連続光?)から赤いフィラメント(Hα?)がたくさん伸びており、これが「蟹の足っぽく見える」ということなのだが、あまり蟹っぽくはない。と、思う。
この天体、星雲星団の最も著名なリストであるメシエカタログの1番目(M1)にあたる。このカタログは18世紀のフランスの天文学者で彗星ハンターだったシャルル・メシエが作った「彗星に間違えそうな紛らわしいものリスト」だが、今ではアマチュアでも楽しめる大型の星雲星団リストとして知られている。ただ、メシエカタログの天体の順番に特に規則はないので、1番だから何かすごいという訳でもない。
2022/2/27撮影、岡山県東部。ATLUX + C11(F7.5) + 6D改(HKIR)、IDAS LPS-D1、1min × 90 = 1h30min、ガイド鏡+M-GENによるオートガイド。
コーン星雲
いっかくじゅう座にある散光星雲と散開星団が重なる美しい星野。ここは2020/12にもStar71(f=350mm)で撮っているが、今回のC11(f=2100mm@F7.5)だと絵の力が違う。コーン星雲は下側の円錐形の暗黒星雲で、まさにその先端では生まれた星が周囲のガスを吹き払っているところ。詳しい構造はハッブル宇宙望遠鏡の画像をご参照。
このあたりはクリスマスツリー星団と呼ばれる星団でもある。この写真を上下ひっくり返したときにコーン星雲の頭にある星を頂点とした二等辺三角形に星が並ぶからなのだが、分かるだろうか?自分はこういう「○○に見える」系に弱い自覚がある。脳の認知機能の弱点なんだろう。
2022/2/27撮影、岡山県東部。ATLUX + C11(F7.5) + 6D改(HKIR)、IDAS LPS-D1、1min × 74 = 1h14min、ガイド鏡+M-GENによるオートガイド。遠目に見るといい感じだがちょっと寄って見るとノイズだらけだ。とにかく露出時間が足りていなくて、この星野を綺麗に撮ろうと思ったら一晩中かかりそうな感じ。(→2022/10/28再処理、DeNoize-AIかけると劇的に効く。)こうなるのはそもそも撮影計画が雑だからなのだが、撮影計画はこんな感じで場当たり的な事が多い。
NGC4565
かみのけ座の銀河。地球に対して正面を向いている銀河をface-on、真横を向いている銀河をedge-onというが、このNGC4565は最もよく知られたエッジオン銀河ではなかろうか。
どうもこの天体は自分にとっては験が悪く、10年ほど前にはるばる潮岬まで遠征した際はシーイングが悪くて驚くほど解像度が低かった。今回はその記憶を払拭したかったのだが、残念ながら強風でガイド不良。結果、かなり甘めで画像を選別しても合計露出25分と短く、しかもスタックしてみると明らかに流れている。まあ験は悪いが対象自体は好きなので、こうしてHPに上げておく。
2022/1/4撮影、岡山県東部。ATLUX + C11(F7.5) + 6D改(HKIR)、IDAS LPS-D1、60s × 25 = 25min。
オリオン大星雲
ザ・天体写真といった趣で立派なものだ。HDR合成のうえ画像処理で輝度差を圧縮しているので、分かりにくいながらも中心の星団(トラぺジウム)や高輝度部の構造も見えている。
「こういうのが撮りたいけど、どんな機材が要る?」といった質問を受けることがあるので、そういった話を。まず光学系の焦点距離については、この写真のような長焦点は重いし面倒なのでお勧めしません。初めての方にはもっと短い光学系(具体的には 200~400mmあたり)が良いと思います。それでどんな絵が撮れるのかは、当HPで Star71 と検索していただくのが手っ取り早いかと。あとはデジカメと赤道儀。これだけ揃えれば、とりあえず第一歩として街中でもよいので明るい星雲(オリオン大星雲とかアンドロメダ銀河とか)に向けて撮ってみるのがよいかなと思います。
2022/1/4撮影、岡山県東部。ATLUX + C11(F7.5) + 6D改(HKIR)、IDAS LPS-D1、5s × 63 + 30s × 19 ≒ 15min、HDR合成。風で星像が飛んだコマが多かったため総露出時間はわずか15分に過ぎない。そのためノイズも多いし、下手にDeconvolutionしてザラザラになってるし、ガイドも流れているのだが、とにかく絵としては力があって気持ち良い。
昴
刷毛で掃いたようなすばるの星雲。これに迫りたいと思って撮った昴の2枚モザイク合成だが、深海の発光クラゲみたいなゴースト(輝星の光が光学系の内部で反射したもの)がたくさん浮いている。いままでC11 + Starizona Reducer Corrector LF(初代) のゴーストで困った記憶はあまりなかったのだが、3~4等の恒星が集まる領域だと流石に厳しいようだ。かくはアップロードしたものの、できれば追加撮影してゴースト除去したいところ。
2022/1/3撮影、岡山県東部。ATLUX + C11(F7.5) + 6D改(HKIR)、IDAS LPS-D1、60s × 81 ≒ 1h21min。
オリオン座
オリオン座は絵の具をぶちまけたような場所だ。輝線星雲と反射星雲が入り混じっている。
似たようなものは1年ほど前にも撮っているがレンズが50mmから85mmになっており、この焦点距離だとバーナードループが大きく写る。バーナードループは200万年前の超新星爆発の残骸だそうで、地球から1600光年の位置にある直径300光年の水素の球殻である(Wikipedia)。
2022/1/4撮影、岡山県東部。SWAT350 + Tamron SP 85mm F1.8 Di VC USD/Model F016E @F2.0 + 6D改(SEO-SP4)、60s × 101 = 1h41m。
冬の天の川
右上から左下に、ペルセウス・ぎょしゃ・オリオン・おおいぬへと流れる冬の天の川。銀河面に沿って赤いHII領域が点在するのがよく分かる。右下に雲が通っているのが残念だ。
2022/1/4撮影、岡山県東部。SWAT350 + Tamron 15-30mm F/2.8 (@15mm F2.8) + 6D改(SEO-SP4)、60s × 21 = 21min。冬は夜が長いので撮れ高がすごい。この晩は夜半過ぎから暫く曇ったのだが、それでもこれだけの成果だ。天文学的な暗夜とは太陽高度が-18°以下の時間帯をいうが、これは日本だと
夏至:21:00~3:00、6h
冬至:18:30~5:30、11h
くらいで、夏至と冬至で2倍近く違うわけだ。おかげでやたら夜が長く感じるし、メイン機とサブ機の2台体制だと画像処理するのが大変なくらいの撮れ高となる。
秋の天の川