主に機材の紹介。技術的なこまごました話は雑記帳へ。


New Nadirus16改 

運搬可能な範囲での最高の速写性と、シーイング限界の分解能との両立を目指して。たぶんこれが自分の最大口径になるんだろう。2022/11/26ファーストライト。全てを引き出すにはまだまだ道のりは長い。D=400mm、f=1600→1200mm、F=4.0→3.0。ASI1600と組み合わせてFOVpp=0.65"、写野 0.83° × 0.55° = 50' × 33'。

 

主鏡:Hubble Optics社 Sandwich mirror 40cm F4パラボラ。DOD=417mm, Deff=406mm, f=63.69"=1617mm, F=4.0, t=41mm, 重量10.5kg、青板、ηref=96%、S/N 14-6-16-185K、面精度 P-V 1/14.7 λ、RMS 1/66.3 λ、Strehl 0.99。

 

副鏡:Orion Optics UK社。Dminor=120mm, Dmajor=169mm, t=15.5mm、Pyrex、ηref=97%。

  

補正光学系:Starizona社 Nexus。短縮率 x0.75倍、corrected field Φ=28mm (APS-C)

 

鏡筒:Geoptik社 Nadirus16 口径40cmドブソニアン、総重量約40kg。トラス長を25cm短縮してF4.5→4.0に改造、主鏡セルのラジアルサポートと副鏡サポートの新製など。

  

赤道儀:Equatorial Platforms社 Dual-axis Al platform。重量15kg、追尾時間80分、slwe speed x10 or x0.5倍速、ノミナル緯度36度。



ナローバンド撮像システム

自宅から星雲を撮影するためのシステム。晴天なのに平日で山に上がれず悔しい思いをすることが多かったので、なんとかならないかと思って、なんとかした。厚さ6mmのステンレス板をコの字に曲げて台座とし、これをベランダのコンクリ壁にボルト固定して撮像システムを載せている。落下させたら本当に事故なので命綱でもつけた方がいいのだが。

 

散光星雲や惑星状星雲は特定の波長で光っているため、その帯域近傍のみを通すフィルタ(Narrow Band Filter)を使えば光害がある都市部でも星雲の撮影ができる。ただし、撮れるのは特定波長の強度の情報しかないモノクロ画像となるので、カラー画像を得るにはフィルタなしの単板カラーセンサで撮った写真の色情報と組み合わせる等の処理が必要となる。具体的な運用としては、例えば自宅から Sigma 180mmF2.8 + ASI1600MM + ナローバンドフィルタ で撮影し、これに光害の少ない観測地で撮った Star71 350mmF5 + EOS6D改 による写真の色情報を乗せる。このシステムによる初作品が2020/9のハート星雲で、色の扱いは難しかったが星雲の写りは満足いくものだった。

 

機材の運用面では、いくらか視界が制限される点を除いて文句がない。思い立ってから15分で撮影に入れるし、デスクトップPCから快適にカメラを制御できる。光害地での目標天体の導入についても写野が広いため目盛環で全く問題なし。片持ちフォーク式なので撮像しっぱなしで朝まで寝ても鏡筒が壁とぶつかることもない。(2020/10/10)



C11 + EOS6D + ATLUX

2020/3、C11再始動。6D改を入手したのは1年前だが、これをC11と組み合わせてみると思いのほか使い勝手が良い。C11とATLUXを核としたシステムは重さと煩雑さが難点だったが、冷却CCDをやめたことで制御用PCが不要となり、電源要求も減ったことで心理的な負担がかなり減った。細かいところは煮詰まっていないが、基本的な仕様は下記のとおり。

 

光学系 :C11改(D=280mm) + Starizona Reducer Corrector LF(f=2000mm, F=7.2)

撮像系 :EOS6D改(px=6.5μm, FOVpp=0.7"/px)

架台  :ATLUX改(PM±5") + AGS-1S(320PPS)

ガイド系:60ED(D=60mm, f=350mm) + M-GEN

 

レデューサは過去記事にも記載したStarizona製の35mm判対応のものを使用。この補正レンズはバックフォーカスが公称132mmなのだが、そこを狙うとコマ収差が出るので調整の結果131mmに落ち着いている。

 

ガイドシステムは今のところガイド鏡方式で運用している。かつては「長焦点ではオフアキシスガイド」という常識に従っていたが、ガイド鏡方式の運用性の良さは捨てがたい。特にオートガイダーとしてM-GENを使いつつ銀河を撮ることを想像すると、オフアキシスでガイド星が見つけるのは苦労しそうだ。一方で、ガイド鏡方式で不可避の課題は主鏡とガイド鏡の視線方向の経時的なずれ。対症療法としてガイドエラーが見えない程度にサブフレームの露出時間を切り詰めるしかなく、実績的には露出時間が2分程度となる。やはりもう少し伸ばしたいとは思うが、M-GENによるオフアキシスガイドがどれくらいできそうかが今後の課題。

 

「もう少し良くならないか?」を至上命題としてサグラダファミリアの如く変わり続けるシステム。部品を一つでも忘れると何もできなくなったりするので、忘れ物チェックリストとしてのシステム図は欠かせない。 (2020/3)



Star71II + SWAT350 + EOS6D mod

2018年頃から稼働した気合が入らない時のためのシステム。C11だと出撃するために半分引っ越しみたいな機材の積み下ろしが必要で、山の上でも電源つないでPC立ち上げてUSBつないでと忙しい。仕事帰りではとてもじゃないがそういう気分になれないが、そういうときでも出撃できるように、との趣旨。

 

SWAT350はUnitec社の赤道儀で、小型にもかかわらず公称値でピリオディックモーション±7"、搭載重量15kgという製品。さらにPEC機能をつける改造をしており、メーカーによれば実測最良PM±3"とのことで非常に優秀。オートガイダとしてM-GENを一軸で使っているが、極軸合わせが適当なので一枚当たりの露出をあまり伸ばせてないない。

 

撮影用鏡筒の主力はStar71II。D=71mmのF4.9でf=350mmという仕様で、大型の星雲を気楽に撮るにはいい筒である。35mm判の隅でも減光が極めて少なく、また蓋に組み込みのバーチノフマスクは明るくて便利。一方で、William Optics社製品は当たり外れありと言われるが、この鏡筒も例にもれず納品時点でスケアリングが盛大にずれており最終的に新品交換となった。Star71IIの代わりにSIGMA180mmF2.8macroを載せる場合もある。

  

EOS6D改は極めて優秀、IRカットフィルタ除去改造(SEO-SP4)をしている。10年前の冷却CCDと比べて、冷やしてないのにこれだけ写るのか、という感想。単板カラーだしパソコンも不要なので、ここまで写るなら冷却CCDの意味あまりないなーと思ってしまう。(2019/8)



C11 + ATLUX + ASI1600MM

Photo by K. Y.

2013~2015年にかけての主力機材だが、最近は飼い主があまり元気ないため後述のSWATに主力の座を譲りつつある。電源・赤道儀・鏡筒で総重量85kgだからなぁ…。

 

C11とATLUXを購入したのはかれこれ20年前。学生の分際で高い買い物をして、親に文句を言われた。

 

Celestron社製C11、口径28cmのF10。C11は相当使い込んだ。主なところは下記のとおりで、まだ100%を引き出したとは思っていないが70%くらいまでは来てるだろう。でもしんどい。

  • 主鏡光軸調整機構。シュミットカセグレンの純正構造では一般に主鏡の光軸(正確には球心)が接眼部の延長に正しく乗らないので、主鏡の裏側に調整機構を設計して仕込んでいる。
  • フォーカス時の再現性を上げるため、目盛付きフォーカスノブを設計して仕込んでいる。
  • 純正レデューサは周辺像が全然だめなので、Starizona社製SCT corrector reducer LFを使用している。

 

赤道儀は初代ATLUX。これはいい赤道儀で実測PM=±5arcsec、ただし重い。k-astecさんのところで改造してもらっており、ASCOM経由でPCと接続することも可能。だが、メジャーな天体しか撮らないので自動導入はあまり役立てられていない。

 

ASI1600MMはせっかく買ったのにあまり使い込んでいない。ASIの前はStarlightXpressのSXVR-H18という冷却CCDを使っていた。フォーマットは同じフォーサーズなので、あまり買い替えた意味もなかったか。(2019/8)